見ました。
まぁこれだけでも面白いっちゃ面白いんですが、目に見えるところだけを材料に騒ぐと幻冬舎の思うつぼですよ。見城徹さんのコピーとも言われる「箕輪」さんという編集者がいるんですが、「こういうどんちゃん騒ぎをすべて可視化するのが売れるようにする秘訣だ」みたいなことをNewsPicksと幻冬舎が喧嘩したときのインタビューで堂々と言っててドン引きした記憶があります。箕輪さんにとって本を売るってのはそういうことなわけです。AKB商法と同じね。見城さんもそういうところがあるのかもしれません。*1
幻冬舎はもちろん見城さん一人でやっている会社ではない。素晴らしい作品を多数出版しています。ただ一方で「倫理的にそれどうなん?」って出版が時々話題になることはあって、「絶歌」も本来は幻冬舎が出そうとしていたという噂は有名ですね。今問題になっているのは「日本国紀」ですが、その前に「殉愛」の件で百田さんと一緒に幻冬舎も名誉棄損で訴えられ、去年裁判で負けが確定したこともみなさんご存知かと思います。
見城さんとしては、ここまで百田尚樹さんとズブズブな関係になってまで出版にこぎつけた「日本国紀」にケチをつけられて出版停止にでもなったらたまらんということもあるでしょうし、今回の騒ぎをネタにしてますます炎上で注目を集め、日本国紀を売りたいという気持ちがあるのかもしれません。
そういう目論見にまんまと乗るべきではありません。
我々は、幻冬舎を相手にせず「津原泰水」さんおよび彼の作品を出版すると決めた「ハヤカワ書房」さんを応援しよう!
話題のためだけに買うべきというわけじゃなく、本当に面白い作品なんだそうです
ハヤカワ書房で出版することを決意したのは塩澤快浩さん。ことSFに関しては日本でも有数の目利きにして功労者です。
編集長就任後は、ライトノベル出身作家を積極的に『SFマガジン』等で執筆させたり、『このミステリーがすごい!』のSF版『SFが読みたい!』の創刊や、叢書「ハヤカワSFシリーズ Jコレクション」を創刊したりするなど、精力的に活動。いわゆる「SF冬の時代」を終焉させた。
・飛浩隆、深堀骨、伊藤計劃、円城塔らの最初の著書を出版。
・冲方丁の『マルドゥック・スクランブル』を三冊連続出版。
私が大好きな「マルドゥック・スクランブル」もこの方が手掛けたのかー!
そんなすごいお方が、編集者生命を掛けてまでこの作品を推すといっているわけですからこれはSF適性のない私でもぜひ読んでみるべきだろうなと思いました。
津原泰水さんの『ヒッキーヒッキーシェイク』(ハヤカワ文庫JA/6月6日発売)について一言だけ。幻冬舎さんとの間で何があったかは、僕のあずかり知るところではありません。ただ、この小説の素晴らしさに、文庫版が世に出ないことがあってはならないと義憤のような感情に駆られたことは確かです。続
— 塩澤快浩 (@shiozaway) May 14, 2019
実際のところ、僕の文芸編集者生活20年の中でも指折りの作品であると確信しています。この小説が読者に受け入れられないのであれば、もはやこの世界に文芸なるものは必要なく、僕が編集者でいる意味もない。「人にこのような美しい感情を抱いてもらうことにこそ、文芸の価値はあるのだと」。続
— 塩澤快浩 (@shiozaway) May 14, 2019
というわけで、僕の文芸編集者としての矜持をこめて、津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』文庫版には、次のようなコピーをつけさせていただくことにしました。「この本が売れなかったら、私は編集者を辞めます。 早川書房 塩澤快浩」。よろしくお願いします。
— 塩澤快浩 (@shiozaway) May 14, 2019
皆様、ありがとうございます。
— 塩澤快浩 (@shiozaway) May 17, 2019
その想いには、これからの仕事で応えさせていただければと。
死なない程度にがんばります。
あと、むやみにつぶしあうのはやめませんか。
編集者はみんな、がんばっていると思いますよ。
そうやって「幻冬舎」ではなく、幻冬舎が最初に自社で刊行したのに売れないとバカにした作品が
それを引き受けてしっかりプッシュした「ハヤカワ書房」版にてヒットしたならそれが一番面白い展開だと思うのです。

- 作者:津原泰水
- 出版社/メーカー:早川書房
- 発売日: 2019/06/06
- メディア:文庫
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かつて奥井潔先生が駿台予備校で英語の授業に使用したテキスト『CHOICE EXERCISES』内の英文 “ 出版社 ” を、気概ある塩澤快浩さんへ捧ぐ。※『かつて「チョイス」という名の英語教材があった』(斎藤雅久、游学社)より引用。 pic.twitter.com/8kUDbsF0eS
— Tomo (@Tomo42293463) May 17, 2019
私はハヤカワ版が出たら必ず買って読みますと宣言しておきます。
追記 箕輪さん今回もプロレスやっててワロタ
なんだそれ。笑
— 箕輪厚介(アジア進出)死ぬこと以外かすり傷 (@minowanowa) May 16, 2019
祈ってないで届けるための方法を死ぬ気で考えて必死で実行すればいいのに。 https://t.co/JwEmd38JOo
早川書房の名編集者・塩澤さんが、編集者人生で何度も使えない手法で、津原泰水の新刊を届ける方法を考えて実行したので、もともと買うつもりなかったぼくが1部買うことを決意しました。
— 須藤玲司 (@LazyWorkz) May 16, 2019
幻冬舎の編集者は死ぬ気でどんなことやってるのかなあ。 https://t.co/mKT242cz7Z
御本人が反論の引用リプライをされていました。https://t.co/bjoadXWORU
— 須藤玲司 (@LazyWorkz) May 17, 2019
「人事を尽くして天命を待つ」が「祈り」だというならば、祈りでしょう。
早川書房の塩澤氏が、津原泰水の潜在読者からどれほどの信頼を勝ち得ているか、氏の切ったカードがどれほど強力か、ご認識が読者と異なるようです。
>売れなかったら編集者辞めるっていうのが、何度も使えない手法なのか!笑https://t.co/a1gd9MHl3v
— 須藤玲司 (@LazyWorkz) May 17, 2019
編集に限らず一般的に、長年の実績があり、誠意を持って仕事に取り組んでいる人は、そう何度も使わない手法だと思います。
誠意のない山師ならば、何度でも使えると認識するかもしれません。
これは一般論なのですが、「死ぬ気でやれ」と他人に指図できる人は、自分も本当に死ぬ気でやっている人だけだし、死ぬ気でやったことが一度でも失敗したら、潔く即座に自殺するべきでしょう。
— 須藤玲司 (@LazyWorkz) May 17, 2019
私はこの記事を読んでから(現在は削除済み)箕輪さんのことは全く信用してないんだけれど、今回のやり取りを見てても、なんか強いものにはひたすら媚びるけど、そうでないものはひたすらこき下ろすみたいなすごいウェイウェイな感じがして超苦手だなこれ……。
*1:※ちなみに、見城徹さんはAKBネタで株価が爆上げした「ブランジスタ」の社外取締役にして大株主でもあります。秋元界隈ともつながりが深いです。どうでもいいけど