私この作品がかなり好きです。
であるにもかかわらず主人公である久能整くんがポリコレアフロって言われてるのがなんかすごい嫌だなーと思ってます。
何回かtogetterの方で「そういう作品じゃないよー」って呼びかけをやってみたんですが、他人のツイートやらはてブコメントをまとめただけでは伝わらなかったみたいでむしろ逆効果になってしまったような気がします。反省。
というわけで、他の人に対して「そういう読み方はなんか違うよー」っていう余計なおせっかいをするのはもう諦めます。代わりに、自分が「ミステリという勿れ」という作品をどういう風に楽しんでいるのかについてまとめておくだけにします。
本作品はとにかく主人公の「久能整」をどういう風に理解するかで人によって全然印象が異なると思います。
主人公の久能くんは「身体は大人、精神は中学生くらい」という風に理解した方がいいです
主人公の久能くんは、ポリコレとかフェミみたいな理念があるキャラクターではないです。
彼はそういうしっかりした軸を持ってるキャラクターとしては描かれていません。
もっとふわふわした、その場での思い付きを思うままに、無責任にしゃべるタイプです。
彼は、図体は立派な大学生ですし、観察眼が優れ知能は凄く高いものの、
一方で精神年齢は中学生低学年くらいだと思った方がいいです。
彼は何事においても自分の好奇心が最優先、自分が正しいと思ったことは基本的に正しいと思って押し付けようとします。
基本的に自己中心的で、他人への思いやりはそんなにありません。(あるようにふるまうけど実際は特に考えてなかったというシーンが結構あります) 自分が嫌なことをされたらむきになって攻撃的になりますし、自分は思いついたらベラベラしゃべる割に相手の話はあんまりちゃんと聞きません。
こういう感じの性格なので、作中でも結構嫌われたり気持ち悪いとか言われたり、うっとうしがられたり無視されたりと散々な扱いを受けています。
名探偵コナン君の逆で、「身体は大人、心は子供」みたいなキャラクターなんですね。
久能くんは、女の味方というわけではありません。
彼は「子供を大切にしない親とか、妻をいじめる男が嫌い」なだけです。
めちゃくちゃ私怨まみれで、大人というものを嫌ってます。
子供を大事にしない親であれば、女性にたいしても結構ケンカ腰で接します。
なぜ彼がこういう性格かというと……
(ここからは8巻のネタバレになりますすのでちょっと注意。)
久能くんは典型的なアダルトチルドレンです
第一話の段階ではっきりと刑事さんから「こいつ歪んでんなー」って指摘されてる通り、
彼は典型的なアダルトチルドレンです。
彼は「子供の頃に母親が父と祖母にいじめられて自殺してしまった」という過去を持ちます。
さらにいうと、その母親が自分を大事にしてくれていたかというとそういうわけじゃなく「疲れて余裕がなかった母は自分のことを愛してくれなかった」というダブルパンチです。
家庭内環境だけを考えればエヴァのシンジ君よりも悲惨で、「カレカノ」の有馬君に近いです。
彼は家の中では誰にも大事にしてもらえなかったので、家族団らんというものそのものを嫌っています。
彼の家族嫌いや家族に対する潔癖症は度を越しており、
鍋が嫌いだし、誰かが入ったお風呂にも絶対に入りたがりません。
他にも家族を感じさせるものに対して強い嫌悪感を示すシーンがよく描かれます。
被害者意識もめちゃくちゃ強いです。
1話や4話が顕著ですが、男親が「親の言うことを聞きなさい」だとか「俺もつらいんだよ……」みたいなことを言おうものなら否定しにかかります。
この辺りは理屈抜きです。とにかく父親に対する被害者意識が強すぎて、めちゃくちゃ過敏に反応してつぶそうとします。
一見理屈っぽく語っているように見えますが、ちょっと注意してみれば論理的ではなく、本人に好き嫌いに理屈をくっつけてるだけということがわかります。
父親の言い分どころか発言権そのものを認めようとしません。条件反射的に父親的なものを否定しにかかっています
特に8巻に登場する11話、12話の久能君はまじでひどいです。ツッコミどころしかありません。
自分の親を否定したい気持ちがあふれて、他人の家庭にもよく口出しします
また、彼は自分が機能不全家族で育ち、父や祖母を否定したい気持ちが強く、
勢いあまって他人の家庭にも子供に悪影響を与える親も、父や祖母を感じさせるものを見るとかっとなって食って掛かります。
さらに、「ネットでいろんな情報を集めて、これが理想の親だ、理想の家族だ、理想の教育だ」みたいなものをイメージしています。
自分が家族を持って確かめたわけでもないのに、その「思いこみ」を他人に押し付けようとしたりします。
この辺りは「残酷な神が支配する」のグレッグと似たような危険な感じがしますね。
家族ガチャには失敗したが、恩師的な存在はおり、その人の影響を強く受けている
また、4巻~5巻で語られているように、
彼は血のつながった家族には大事にしてもらえなかったものの、
近場に住んでいる女性に大事にしてもらい、その人に居場所を与えてもらい、いろんな教えを受けています。
この尊敬する「先生」から強い影響を受けた結果、彼は将来的に教師になろうとしており、大学でもそういう進路を選んでいます。
9巻では彼が女の子の姉妹に対して、家庭教師として自分の考えを教えようとしているシーンが描かれます。
個人的な意見ですが、久能君はかなり思い込みが強く、押し付けが強いため個人的には教師になってほしくないタイプです。
こういう難儀な性格をしているため、久能くんは基本的には「ぼっち」であり、人の好き嫌いは凄く激しい。ただし好奇心は強く人見知りは市内ので変わった人と仲良くなることが多いです
もう9巻まで出ていますが、作品開始時点から付き合いがある友達の存在が描かれていません。
いちおう大学にあいさつを交わす程度の関係の人はいるようですが、基本はボッチです。
その代わりに、作中では、事件を通して知り合った刑事の人とか殺人鬼のガロくんとか
多重人格者の女性なんかと仲良くなってます。
久能くんが言ってることはかなり適当なことが多いです
ポリコレだからこういう発言をしてるわけじゃなく
彼はその場の話題に応じて、自分が思いついたことや今までネットとか本で得た知識をおもいつくままポンポンとしゃべってるだけです。
そのためか、彼の語る話は適当なものが多く、ソースもいい加減なものが多いです。
これは意図的にそういうキャラクターとして描かれていると思います。
ただし、田村由美先生自体が、過去作の時から結構いい加減な引用を繰り返してきたため
「作者がどこまでわかってて久能くんにいい加減な発言をしているのか」がわかりにくく不安になります。
という感じでしょうかね。
以上を踏まえて、私が本作品をどういう風に楽しんでるかについて書きます。
1巻あとがきで作者さんが書いているように、本作品は、私にとっては彼が周りにドン引きされながらも一人で延々としゃべってるのをウオッチして楽しむ作品です
本作品は「久能整」という人間が書いた徒然草、あるいはTwitterでのつぶやきなるものをのぞき見しながら久能整という人間をウォッチして楽しむお話です。
本作品ではミステリっぽい展開が起きますが、
金田一少年やコナンみたいに読者が読んで推理できるように作られていません。
ミステリとしてみれば完全に失格ですが、作品タイトルで最初からそう言ってます。
本作は「可愛い久能君をめでるのに差しさわりのない程度のイベント」として事件があるだけです。
若さや過去のトラウマなどなどからかなり変わったというか偏った考えを持ってる主人公は、
毎回毎回ツッコミどころの多い発言をたくさんしながらも
懲りずに思いついたら自分の考えをしゃべらずにはいられない。
ネット廃人のブログとかのTwitterでこういう人いますよね(9割くらいの人からお前だよって言われそう)。
読者としては、そんなネット廃人みたいな久能くんという人物を見ながら
時にツッコミを入れつつ時々「珍しくいいこと言うやん」って感じで
眺めて楽しむのがいいんじゃないかなって思ってます。
そうだね、10年前の青●才さん(ただし知識や教養は久能君の方がだんぜん上)をウォッチしてるような感覚だね。
私はそいいう感覚で楽しんでます。
要するに主人公がなんかずれたことを言ってて「イラっとする」のは織り込み済みでその「イラっとさせられる」感覚も含めて楽しむのです。そういうのが好きな人向けの作品だと思ってます。
逆に、本作品を「深夜のダメ恋図鑑」だとか「クロエの流儀」みたいな「スカッとジャパン」みたいに思ってる人は、いったい何をどう読んだらそうなるのか逆に教えてほしい。
はてな民がこういうのを嫌いなはずがあろうか、いやない。
そういうのが嫌いな人がはてなを長く続けられるわけないですよ(グルグル目)
全はてな民は本作品を読んでイラっとしながらもいろいろツッコミを入れて楽しんでいこう!
1巻から3巻はAmazonとかコミックシーモアで無料で読めるし、4巻以降はDMMで半額で読めるので今のうちに買うのだ。