書籍「ゲームの歴史」について(10) | Colorful Pieces of Gameハックルさんが2chをソースに本書いてるという部分は賛同できない。というのは明らかにゲハ民より知識がないから。そもそも未だに2chのゲーム専門板を見るほどゲームに対する情熱があるならこんな本は書かない。
2023/04/02 17:38
このコメントは岩崎ひろまさ氏のこの部分に対するコメントだと思うが、私もそう思う。
手厳しいことを書かせてもらうと、筆者のゲームについての歴史のソースの大半は2ちゃんねるなどに代表される信憑性が極めて低いところからばかりではないかと思いたくなるほど質が悪い。そこをとっかかりにして勉強してくれているならまだしも、そこをベースに事実のように語られても困るのである。
ハックルさんは、間違ったソースを見ているのではなく、そもそも何も調べずに頭の中でストーリーを作っていると解釈したほうが筋が通る
ハックルさんの人となりを知っていれば、ハックルさんは自分がいちばん賢いと思っているので他の人の知識や研究に敬意を持たず他人の書いたものをそれほど参考にしないで全部自分で考える人だというのはわかるはずだ。
本人はゲームに関する書籍をたくさん読んだといっているしそれ自体を嘘だというつもりはないが多分読んでも片っ端から否定している(自説に都合の悪い部分は斬り捨てたりすぐ自説で上書きする)のでそれらが彼の記述に生かされているとは到底思えない。
あくまでも、彼は自分が経験や興味を持って独自に収集した情報(これらは主に書籍や雑誌だろうと思う)をもとにしてネットで検索することなく、一から自分の頭で作り上げたものだと解釈する方が自然だ。
ハックルさんは「毎日更新する」必要があったから、一つ一つを掘り下げることができなかったという事情もある
どうも「ゲームの歴史」はハックル岩崎さんがブロマガに書き散らかしたことをまとめただけっぽいな。https://t.co/V8GhbWJsle
— たにみちの@BA-KU (@taninon) 2023年3月28日
これは多くの人が指摘しているが、そもそも「ゲームの歴史」の大元はハックルさんがブロマガで毎日更新していた記事である。それまでも断片的にブロマガでゲームの話題について触れていたが、だいたい2020年の真ん中頃に集中的に断続的にこのゲームの歴史について記事を更新し続けていた印象がある。
ch.nicovideo.jp
ハックルさんはすぐに話を盛る人間なのでこの本を書くために「6年かけた」といっているが、実際のところは2020年ころに書かれていたブロマガを土台にしており、それをベースにして稲田さんがあらためて書籍にするために書き起こしていった、とみるべきだろう。
ハックルさんは、ジョブズと同じくらい自分を村上春樹になぞらえる癖がある人だが、村上春樹に刺激を受けたのか毎日一定ペースで文章を書き続けるということを自分に課している。*1
2012年9月からは10年以上ずっと毎週5日、一日も欠かさずにブロマガを更新し続けている。これにはクリムゾン先生もニッコリであろう。
www.youtube.com
しかも、毎日更新するだけでなく、ちゃんとテーマを決めて1つのテーマごとに本ができるくらいのボリュームで記事を書いている。
この辺りはドラッカーの教えもちょっと意識しているのかもしれない(ドラッカーは1年ごとに1つのテーマに集中して専門家レベルになることを推奨している)
ただし、すごいっちゃすごいのだが、こういう「毎日更新されてるもの(しかも筆者の本業ではない)」がベースになるとどうなるか。
みんなはわかるかな?
そうだね、ただの「ぼくのかんがえたさいきょうの」みたいな思考実験ノートになっちゃうんだよね。
凡人が毎日2000文字以上のアウトプットを続けようとするとどうなるか
私も毎日のように3000文字くらいの記事を更新し続けているからめちゃくちゃよくわかるのだが、毎日2000文字を越えるアウトプットを続けるというのはそんなに簡単なことじゃない。
まず、当たり前だが正確さは犠牲になる。
インプットが十分でないときでもなんでもとにかくアウトプットしなければいけないのだから。
次に、「自分の頭だけで考えたこと」になりがちだ。
仮説までなら自分さえいればできるから何とかなるが、それをどの程度検証するかは余裕がないと難しい。
ハックルさんが、ブロマガだけをやってる人ならいいけど実際には他の仕事もしていただろうし余裕がない時も多かっただろう。
それでも更新を続けるというのはすごいことだが、必ず検証のプロセスは犠牲になっていく。
そして、ある時にその検証が不十分で間違った仮説を立ててそれをスルーしてしまうと、そのままずるずる行ってしまう。
さらに、体調や思考の調子が悪いときでも更新しないといけないわけだからその状況におけるインスピレーションに大いに依存する。別の機会に考えていればそうはならんかったようなアウトプットを出してしまうことというのはすごくよくある。いろんな意味で結構ガタガタになりやすいのである。
さらに、ハックルさんの場合、ブロマガは信者しか読まないので、他者からの検証も入らない。
こんなん、無料ブログでやってればすぐに総ツッコミが入ってむしろ傷は浅かったと思うのだけど、有料だとそもそもこういうのを好む人だけが買ってるからなんも問題なかったのか。
— たにみちの@BA-KU (@taninon) 2023年3月28日
ハックルさん自身が思考が独特すぎるという点があったにせよ
t.co
いろんな意味で、事故りやすい環境の条件がそろっていたと言える。
一時期の悪い癖がぶり返してしまっちゃったのかもしれない。
自己批判も、他人に対する冷静な批判もない。
https://skycommu.hatenablog.com/entry/20081226/1230298657
話の飛躍はほとんど次元を超えるかのよう。
あるのは自分の「正しい」意見。「正しい」認識。
人からの批判に対し、自分のことは顧みず、意味不明な言説で看破したつもりなっている最近の姿には、驚かされた。
「自分と自分の意見」と「人と人の意見」を積み上げて、新しいものを見ていこうとする姿勢が全然ない。
せめて本しゃぶりさんのように、時々まとめを無料記事として公開していれば……
この点において、本しゃぶりの運用はブロマガオンリー運用と比べてとても合理的だ。
毎日コツコツとアウトプットをして、それをファンの会員に支持してもらう。
note.com
そして、ある程度まとまったらブログでしっかりとした記事として仕上げる。
ファンは制作過程を見れるし、没になったアイデアなんかも楽しめる。
作者も気軽に更新ができてアウトプットを途切れずに続けさせることができる。
その上で、ちゃんと公開記事でまとまったアウトプットをすることで質を追求するプロセスが入る。
小説書きや動画制作者、お絵描きの世界ではもともとそういうファンサイトが充実してきているが、
最近は文章でもそういう場が回るようになってきていると思う。
ブロマガも、もともとはそういう場だったはずだが、ハックルさんの場合は
ほぼクローズドの状況になってしまったがゆえに、途中でリスク管理ができずに
3冊もの本が出来上がった後で「これ💩じゃねえか」という評価が下ることになってしまった。
2014年ころからやたらと「教える人間になる」ことにのめりこんでいったのも今から考えると良くなかったのかもしれない
ハックルさんは情報の正確性を担保する調査する力より「信じ込ませる力(ハッタリ力)」を鍛えるようになっていった、
人が成長するためには、「理解できないこと」をそのまま受け入れる必要がある。そして、そこにおいて必要なのが「信じる力」なのである。
「なぜかは分からないが、この人の言うことなら信じられる」と、言われたことを無批判に受け入れることこそが、その人の成長のきっかけになる。それゆえ、素直な人ほど成長しやすく、疑り深い人はなかなか成長できないのだ。一方、そこで教師に求められるのは、「教え子たちに信じさせる力」ということになる。それは、ある種の威厳やカリスマ性だ。
個人的に、もうハックルさんの出した本の内容についてツッコむつもりはない。あとは「どうしてハックルさんはこんなアウトプットをしてしまったのか」「どうしてこの内容で講談社はOKを出したのか」あたりだけはもう少しだけ考えたいと思う。
*1:ブロマガ1周年目のころになぜ毎日更新するのかについて説明した記事もあげている