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「こういう意見にも一理あるだろ!」 「そもそも一理もない意見などそうそう存在しません」

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anond.hatelabo.jp

について


「こういう意見にも一理あるだろ!」
「そもそも一理もない意見などそうそう存在しません。 なぜ一理だけで結論を決めようとするのですか?」

「一理ある」は相手の存在を否定しないという程度の意味しかなく、むしろ「一理しかない意見」は普通に駄目な意見です

あらゆる主張には、それが存在するだけの理由、すなわち「一理」は宿っている。

社会から完全に隔絶された、何の文脈も持たない純粋な悪意や無知から生まれる意見というのは、実は極めて稀である。

誰かの発言の裏には、その人なりの経験、価値観、そして何らかの危機感や希望が必ず横たわっている。

だからこそ、ある意見に対して「一理ある」と認める行為は

対話の第一歩として非常に重要だ。それは相手の人間性と背景を尊重し、一方的な断罪を避けるための作法でもある。

しかし現在の我々はあまりにも頻繁に「一理」という言葉の魔力に頼りすぎている。

一理だけしかないものが正しさを主張することが多すぎるし

一理を基準に重要な政党選びまでやってしまう。

一つの正しさに安住し、それだけで勝ち誇る態度は、複雑な現実から目を背ける知的な怠慢に他ならない。


問題は「一理」を対話のスタートではなく意思決定のゴールにしてしまうことにある

一つの理を見つけた瞬間に、「やはり自分の考えは間違っていなかった」と安堵し、そこで思考を停止させてしまう。

あるいは、相手の意見の矛盾点や欠点ではなく、その中に含まれるわずかな正しさを盾にして、議論そのものを終わらせようとする。

これは、怠慢としか言いようがない。




提示された記事の筆者の葛藤は、この「一理」あるいは「ワンイシュー」の罠が、いかに現実の政治選択において強力な引力を持つかを見事に示している

彼は元々、国民民主党の「対決より解決」という現実的な路線に期待を寄せていた。

これは、イデオロギー闘争に明け暮れる政治にうんざりし、具体的な生活の向上を求める多くの人々の感覚を代弁するものであろう。

ここにも「一理」がある。しかし、その期待が裏切られたと感じた時、彼の視線は別の方向へと移っていく。


彼が最も懸念する問題は二つ。

第一に「経済」、そして第二に、近年ますます深刻さを増していると感じる「移民問題」だ。

特に後者に対しては、

「このまま行ったら、10年後、20年後にマジでフランスみたいになるんじゃないか」
「あの未来だけは、本当に、心の底から嫌なんだよ」

という、極めて強い情動的な拒否感を抱いている。

この切実な不安もまた、一つの「理」である。社会の変容に対する恐れは、人間として自然な感情だ。

そして、既存の主要政党がこの問題に真剣に取り組んでいるように見えない、むしろ推進しているようにすら見える。

自民党も、かつて期待した国民民主党も、彼のこの切実な不安に応えてくれない。野党は論外。

こうした八方塞がりの状況で、彼の目に留まるのが参政党だ。





彼は参政党の全体像を手放しで肯定しているわけではない。

むしろ、「経済政策とか、ちょっとトンデモな部分がある」
「あの党がデカくなって、政権を担うとかは正直勘弁してほしい。それは悪夢だ」と、極めて冷静に、そして批判的に認識している。


にもかかわらず、なぜ「ワンチャンあり」と感じてしまうのか。


それは、彼が最も重要視する一つのイシュー、すなわち移民・安全保障問題に対して、「一番デカい声で問題提起してるのは事実じゃん?」という認識があるからだ。

ここに、ワンイシューの魔力が潜んでいる。

他のすべて(経済政策、政権担当能力)には目をつぶり、

たった一つの、しかし自分にとっては最も重要な問題に応えてくれるかもしれないという期待。

その一点において、参政党の主張には抗いがたい「一理」が存在するといえる。



「ショック療法」とか「与党にお灸をすえる」という発想が、実際は考えるのがめんどくさい人がやらかしがちな認知不協和の解消法である

そして、彼の思考は、「ショック療法」という発想に至る。

これは、参政党を勝たせるためではなく、自民党や国民民主党に「おい、こっち見ろよ」と警告するための投票だという。

このロジックは、非常に巧妙であり、多くの人が陥りがちな自己正当化のプロセスを含んでいる。

自分の投票行動が、支持したくない政党を利する直接的な行為ではなく、本来支持したいはずの政党への「メッセージ」なのだと意味づけることで、心理的な矛盾を解消しようとしているのだ。

トランプ投票者の気持ちがわかると彼が言うのも、まさにこの点にある。

アメリカのラストベルトで職を失い、エスタブリッシュメントから忘れ去られたと感じていた人々にとって、トランプの過激な発言や品性の欠如は二の次だった。

「君たちの苦しみを理解している」「メキシコとの国境に壁を築き、雇用を取り戻す」という
自分たちの最大の関心事(ワンイシュー)に直接訴えかける言葉だけが響いた。

他のすべてを脇に置いてでも、この一点における「一理」に賭けてみようという心理だ。




だが、この「一理」と「ワンイシュー」に頼った決断は、本当に賢明なのだろうか。


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