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【年収900万→40万→800万→3000万】とあるエロ同人作家さんの収入記事読んで思ったこと

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なかに-経歴

まず単純に金額がすごいってのがあるんですが、額じゃなくて冊数の方を見ると本当にすごいなって思う。

収入源の柱となっている「昔は可愛かった」という作品は最低でも1作品で2万5000冊売れています(FANZA以外にDLSiteなども合算)
まずお金を出してくれる可能性があるレベルでファンの人を2万5000人作るって尋常じゃないと思う。

私なんか毎日ちまちまとマンガ紹介記事を書いてますが、それでも月に150冊売れたらいい方で一作品あたりだと10作品売れることが稀です。
しかも私は優れた作家さんが描いた作品を紹介しているのに10作品しか売れない。
一方上の同人作家さんは1作品で25000人。しかも純粋に「自分の作品」で勝負されている。これはものすごいことだと思う。

今って本当にビジネスセンスがある人には無限のチャンスがあるし、逆に私みたいに考えなしで記事書いてるだけではいくら積み重ねてもあまり意味がない。
というか、前々から思っているんですが私のブログどう考えても「書いてきたことが積み重なってない」ですよね。

どうやったら書いてきたことが積み重なってくれるのか、そのあたりが全然わからない。
その場その場で思いついたことを書いてるだけではダメなんだなぁって本当に思います。


最大手級サークルの「クリムゾン」の利益は?

ところで、エロ同人最大手といえば「クリムゾン」くらいしか知らないんですが、ここほんと化け物だな。

FANZAに登録されている作品が289作品あり、古い作品はさておいて最近の作品は安定してFANZAで8000、DLSiteで5000くらいの売り上げがある。
さらに言うとクリムゾンはBOOTHを使って自サイトにて通販を行っているためこちらの売り上げが同程度あるとすると1作品あたり20000を超える。

クリムゾンは1作品あたりの単価も高く1500~2000円平均であるため、少なく見積もって1作品あたり3000万の売り上げということになる。
完全新作が年間年25品供給されているので、少なく見積もっても年商7.5億……。

そして上の記事でも述べられているように、DLSite、DMMは売り上げの7割が利益になる。
正確な委託料は下記の通りだけれど低く見積もっても6割。

https://trial.dlsite.com/pdf/DLsite_circle_guide_touch.pdf
f:id:tyoshiki:20190706215621p:plain

というわけで、年収4.5億~5億の利益ということになる。何人くらいのスタッフで回してるか知らないですがたぶんそんなにいないと思う。

さらにさらに。

実はDMMやDLSiteというのは、作品ページから関連作品などが売れた場合、きちんとアフィリエイト料金が作者に還元される。

その額は10%程度。

なお、twitterで時々お話させていただいているとある専業のエロ同人作家さんがいるのですが、2年前彼の年収が400万くらいのとき、月4万円程度のアフィリエイト報酬があったと言っていました。つまり売り上げに対して10%程度のアフィリエイトが上乗せされるということになります。そのことを考えると、さらに0.5億円くらいうわのせされている可能性があります。 並の上場企業よりはるかに稼いでおりますね。まさに同人ドリームという感じがします。



ところでDMMは非上場企業なので買えませんが、DLSiteは上場企業の子会社です

ご存じの人も多いと思いますが、DLSiteを運営している(株)エイシスはゲオの子会社です。

www.itmedia.co.jp

ゲオはLDHから全株式を19億円で取得し、完全子会社化する。
2009年9月期の売上高は41億8100万円、営業利益は7億6700万円。

グループ一覧 | 株式会社ゲオホールディングス

100%子会社なのに、決算説明に全く出てきませんが売り上げは120億までのびています。
2019年3月期 決算説明会資料 | 株式会社ゲオホールディングス
単純計算ではないでしょうが、当時19億で買ったこの会社だけで営業利益20億くらいたたきだしてるんじゃないでしょうか。すごい。

f:id:tyoshiki:20190706234700j:plain
https://www.eisys.co.jp/performance.html

これだけの優良企業を傘下に持っていながら、本体事業が不振のためゲオグループの時価総額660億程度。来期業績は悪いので今は株価が下がっていく一方ですが、どこかの段階で株買って寝ておきたい企業ですね。

f:id:tyoshiki:20190706234913p:plain
来期業績は悪いけど、下げ切ったところで買っておきたい

知り合いのエロ同人作家さん、海外対応で一気に飛躍するの巻

ところで、そのエロ同人作家さんからはほかにもいろいろ話を聞いているのですが、本当に面白いです。
彼も同人作家さんとしてはかなり成功しており、現在では超一流企業の社員より手取りが多いですが、3年以上もの間、かなり苦しい時期が続いたといいます。

成功のきっかけは「たまたまジャンルが当たったから」・・・・・・というわけではありません。

上の記事と同じように成功したのは作品がDLSite上で公式から宣伝されたことがきっかけでしたが、
それが来るのをぼんやりと待っていたわけではなく、きっかけつくりはしっかり積み重ねて「自分の手でつかみに行って」いました。







作家のプライバシーの問題もあるのでいろいろとフェイクを入れながらちょっと紹介します。

成功の要因はこんな感じ…かな?(画力の向上みたいなことは毎日やっているのは当然、としてほかにもこれだけやってる)

①100部ほど売れるようになってきてから、2年間は赤字覚悟で全国の同人即売会に顔を出し有名な同人作家さんと顔つなぎをしていた(こういうといやらしく聞こえますが、実際は自然と好きな作品について語り合ううちに親しくなったそうです。そうでないと相手もわかりますよね)

②twitterでもこまめに同人作家と交流をおこない、リアルで知り合った同人作家さんを軸にして知り合いを増やしたり、作品の宣伝や無料絵の公開などを行ってフォロワー数を6000人まで伸ばしメディア力を高めた。

③作品つくりの際は、いくつもの属性を取り込んで「公式による値引きセールの目玉商品にピックアップされる」ことを狙ったり自らも値引きを行って売上本数を伸ばし、「宣伝する価値のあるサークルである」という認知を作るよう腐心した。(このくらいやっておかないとそう簡単には宣伝してもらえたりしません)

④さらに、彼独自の取り組みとして「海外対応」を積極的に行った。
彼の作品の中で、ほかの作品と比べて5倍以上売れた作品がある。それは海外対応が大きなポイントになったと言っていた。

ある時に一日にいきなり自分の作品が過去作含めて一通り買われたことがあったらしい。その時買ってくれたのは海外客だったそうだ。しかもそのあと同じような注文が何回か発生した。「なんで海外の人が自分の作品を知ってるんだ?」と思って自分の作品を検索してみると「Funsubという形で海外に翻訳されていて、むしろ海外で知られていた」ということに気づいた。

①「海外のファンは金持ちであり自分の作品を気に入ってくれた客は過去作品を全部買ってくれる上にそれをコミュニティで広げてくれるようだ」
②「そもそも自分のジャンルはマニアックであり、日本国内だけではなく海外でも知られているなら海外向けにも売れるようにしてみたらいいのではないか」
③「日本のHENTAIは海外でも人気があるのは本当だった。しかし自主的に海外対応できている作品は少ない。同じジャンルでも差別化できるのではないか」
④「ただ、同人誌だと勝手に翻訳されて配布されてしまうFunsub文化がすでに進んでいるようだから、まずはゲームから海外版対応を試してみよう。ゲームなら文字数少な目にもできるし」

海外の需要に気づいた彼は、それなりに高い投資ではあるが、
DLSiteのサービスを使って海外翻訳を行ってもらい、ちゃんとした英語でプレイできるゲームを販路に乗せた。

www.dlsite.com
f:id:tyoshiki:20190706220943p:plain
※見ての通り、お安くはないのである程度の売り上げが確保できてないと厳しいです。

ちなみに、ゲームの中身についてはDLSiteでちゃんとした英語にしてもらったものの、このサービスだと他まではカバーしてくれない。なのでゲームの宣伝ページの英語分は友達に頼んで書いてもらったり、日頃の宣伝ツイートは自分で辞書を引きながら毎日3ツイート英作文をして英語で宣伝ツイートをやってたそうです。このあたりがまだまだ英語版販売の壁になってますね。

さて、こうした面倒くさい部分を面倒くさがらずにやった結果として、彼の作品は思った以上によく売れた。(4000本以上出荷) そして、この作品が売れたことによって、日本語版のほかの作品も売れたし、ほかの作品も英語化してほしいという要望を受けるようになった。 随時売り上げを見ながらほかの同人誌も海外版に対応しているらしいです。


「同人作家」という個人事業主で成功した人が心掛けていること

この同人作家さんは、会社を辞めて専業になると決めてから、しっかり「ビジネス」として考えて日々取り組んでおられるんですよね。 

いろいろな話を聞かせてもらったけど本当に勉強になることばかりです。いくつか面白かった話をピックアップして紹介します。


①原作付き同人は3か月後半年後の未来を読む「先物取引」のようなもの。
自分は圧倒的画力や瞬時に作品を描けるスピードを持っていない。(私からしてみたらめちゃくちゃ絵がうまい人なのですが、絵の力だけで競争するのはは本当に厳しいみたいですね)。だから三か月後、六か月後の需要を予測して作品つくりに取り掛からなければいけない。
 
すでに圧倒的人気の作品や、覇権作品に当たったら、大手につぶされる。実際「艦これ」同人はかなり頑張って描いたし自身もある作品だったが、むしろほかのジャンルの時より売り上げが芳しくなかった。だから人気サークルならキャラクターをずらしたり、シチュエーションで差別化を作る。それでもジャンル選択の方が重要だから原作付き同人で当てるためには「先物買い」のような感覚が必要。 FGOなどのジャンルでは絶対に勝負しない。一時的な売り上げが良くても作家として埋もれてしまう。長期的に生きていくためには自分は作家として差別化しなければならないのだからFGOでは無理。 今はまだ知名度が高くなく、半年後に覇権ではない二番手・三番手として来るものを当てる必要がある。この点において「G・S」は見事に狙いが当たって、アニメヒット後にまだ作品がほとんどない中でエロ同人需要をさらうことができ、書店でポップまで作ってもらうことができた。一方で「D」や「F」は外れてしまった。

同人でジャンルを当てることに比べたら株の方がまだ簡単だなと思ってしまいますね……(ちなみにこの人は株式投資もやっています)


②原作付き同人をやっている限りばくちの世界からは抜け出せない。
原作付きはあくまで「人気を借りている」自覚があるしリスクも大きい。後も原作付き同人はやっていくけれどそれはあくまで趣味と心得る。オリジナル同人を買ってくれるファンがどれだけ作れるかが勝負。画力だけで勝負するのではなくきちんとファンを作ることを意識するのが自分の生存戦略だ。

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③同人即売会に来てくれる客が最も関係の強い顧客であり自分の活動のモチベーション。しかしビジネスとしての主戦場はあくまでも電子版
プロ作家だってそうだ。自分もエロ同人のプロとして食っていくつもりなのだから、同人即売会はあくまでファンとの関係つくりの場として考える。ここだけで食っていくことはできない。強いファンの人にもFANZAやDMMでの利用を知ってもらう工夫をしている(QRコードや名刺を作っている)。twitterなどいろんなチャンネルから自分のファンを作り、自分の作品を好きになってもらう努力を惜しまない。



④FANZAやDMMができたことで初めて同人作家としての活動がストックビジネスになって持続可能なものになった。
こうしたサービスがなければ同人活動は趣味にとどめるつもりだった。在庫管理のコストやリスクが減り、利益率も高くなって、専業で生きていける可能性が始めて発生した。結局のところ「きちんと食っていける仕組み」があるかどうかが大事で、自分がゲーム会社で働いているときは、一生これで食っていけるイメージが見えなかった。それよりも同人で食っていける可能性の方が見えた。だから迷ったけどこちらで挑戦することに決めた。 大変だったけど挑戦したかいはあったと思う。



⑤同人作家の最大の資産は健康と作品つくりに協力してくれる人。どんなに売り上げがしんどくても健康への投資と協力者への感謝・尊敬だけは惜しまない
毎週〇回以上はプールで水泳をする。義務はないけど毎年健康診断は行く。健康じゃなくなったらすべてが終わる。毎日規則正しい生活を送れるようにするためにきちんと計画を立てて作業をする。そこまでやっても作品完成前は修羅場になる。同人って本当に大変。自分が大変だから今のパートナーには本当に感謝しているし、その気持ちをきちんと示すようにしている。


これすべての経営者に知ってもらいたいくらい名言だと思うんだけど。経営者さんは従業員の健康や信頼関係を「資産」と考えてちゃんと「投資」してますか?
それを「コスト」と考えてケチってるような会社は、調子が悪くなった時につぶれても文句言えないと思う。せめて調子がいい時だけでも、きちんと健康や信頼関係に対してしっかり投資をしてほしいなと思います。今って景気が良い時でさえそういったものを絞ろうとしてるでしょ。で、会社に対する信頼度が全然なくなってるでしょ。



このほかにも、この作家さんからはたくさんの学びを得ています。本当に尊敬しています。 これからは、「何をやっているか」よりも「どういう姿勢でその仕事に取り組んでいるか」とか「どういう仕組みの上で戦っているか」の方がはるかに大事になってくるような気がしますね。


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