こちらはジロンド派寄りの立場からフランス革命を描いた「杖と翼」と違い、
ジャコバン派寄りの立場からフランス革命を描く作品。
フランス革命によってルイ16世やマリーアントワネットが処刑されるまでの展開がメインだ。
終わり方がにかなり特徴がある
主人公はギデオン。エロ小説家をやりつつ、反体制活動をしていたが、ロワール家の貴族「ジョルジュ」に誘われる形で革命のど真ん中に巻き込まれていく。
この作者の作品にしては珍しく人間関係のネタバラシは2巻のはじめのほうですぐ終わり、その後は歴史物語として進んでいく
この作品だとルイ16世はパワフルな名君だし、ロベスピエールは国王を敬愛する死刑反対論者の童貞だし、サン・ジュストは非モテの好青年。
ロベスピエールは「ナポレオン」を除いてはだいたい好感の持てる人物として描かれるよな。
一方で、サン・ジュストは作品によって描かれ方がぜんぜん違う。
こちらの作品ではサン・ジュストは人間離れした美しくて優秀な存在としては描かれていない。その部分はジョルジュに分離してしまった。
そのかわりにむっつりスケベの非モテで父が貴族の地位を買ったことにコンプレックスを出だしている好青年として描かれている。
しかしなんといってもこの作品を特徴づけているのはルイ16世の描かれ方だろう。
「パワー重視のファイター」っていうところ何回読んでも好き。
少なくとも当時の国民は、逃走事件まではルイ16世を敬愛し、不満は全部オーストリア女にぶつけていた、というのは割と史実っぽい。
とにかくフランス革命の狂気を正当化するために、王妃はどこまでも憎まれる悪役でなければいけなかった。
日本の幕末における明確な悪役って井伊直弼くらいしかいないが、こんなものでは全然足りなかったと思われる。
本作品では、破壊衝動の権化であるジョルジュ(サン・ジュストの分身)が恐怖によって民衆の暴力を煽っていく
どうも、ロラン夫人といっしょに組んで革命のためのテロリズムを主導するという筋書きのようだ。
おまけ1:革命という概念自体がこの時に生み出された・・・?
というわけではない。
1543年にニコラウス・コペルニクスは地動説の論文「天球の回転について」を出版したが、その題名で使用された「回転」(Revolution)は天文用語から、後に政治体制の突然の変革に使用された。この用語の政治的な最初の使用は、1688年のイギリスでのジェームズ2世からウィリアム3世への体制変革で、名誉革命と呼ばれた
おまけ2:悲しいけれどこれが現実なのよね
ただ、階級があるのは自然だとしても、それは血によるものではなさそうだというのは
テクノロジーとか社会制度の影響で長い時間をかけて浸透してる気はするね。