一つ前の記事で絶対国防圏設定の根拠と過程を説明したのだが……
結論から言うと、この絶対国防圏にはあまり意味はなかった。天皇から怒られたから宿題を提出しただけのような話だった。
海軍は、どこまでも現実を受け入れる覚悟がなかった。(というかまぁ「兵員回収に回す船すらなかった」からどうしようもなかったんだろうね)
しかも絶対国防圏設定後も、海軍はソロモン諸島の戦いにおいてその外側に位置する地点の確保にこだわったため
国防圏内で防衛体制の構築が後回しになる拠点があった。
アメリカ軍に掌握されるとB-29爆撃機による通常の日本本土に対する空爆が可能となる重要拠点であるサイパン島についても
今度は陸軍側が中国大陸における作戦(大陸打通作戦)に拘ったため想定したほど防衛力増強が進まず
防衛体制が整う前にアメリカ軍の侵攻を受けることになる
というわけで
陸軍は戦線縮小を狙っていたが、海軍はまだマーシャル諸島での決戦を諦めていなかった
自分が国防圏の外側に配属されてたら絶望しかないよねこれ・・・
なにがひどいってこれ撤退させてくれるわけじゃないんだよね。
「絶対守る範囲」に入れてもらえなくなっただけ・・・
正直これ「何のために」設定したのかが全然共有されてないし何の意味があったんやろか
現場の参謀は現状を把握して意見を述べていたが、上層部は激怒して握りつぶしてしまった
寺本熊市が
「大本営作戦課はこの九月、絶対国防圏と言う一つの線を、千島-マリアナ諸島-ニューギニア西部に引いて絶対にこれを守ると言いだした。
一体これは線なのか点なのか?(中略)
要するに制空権がなければ、みんな点(孤島)になってしまって、線ではない。(中略)
大きな島でも、増援、補給が途絶えたら
その島に兵隊がいるというだけで、太平洋の広い面積からすると点にさせられてしまう」と発言
「誰の目にも明らかなように、作戦の鍵は航空戦力であると見られていた。
いまラバウル、ソロモンの前線でさんざん敵に圧迫されて苦戦している重大原因も、こちらの航空戦力が足りないからであった。そしてマリアナ、カロリンの線に後退してみたところで、航空戦力が不足ではそこでも敵を食いとめる見込みがない。
この新しい防御戦を「絶対国防圏」と名前だけえらそうにつけてみたところで、絵にかいた虎の役にもたたないだろう。」
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それでもいちおう、海軍と陸軍が共同して戦略を実行するという建前が出来たことだけは唯一の成果であったかもしれない。
(まぁすぐにうまくいかなくなるんだけれど)
さすがにソロモン諸島で明らかに無理なところだけは撤退命令が出た
アメリカの魚雷艇によって78名が救助された。
しかし、36名が収容されていた魚雷艇「PT-163」では事件が起こった。
日本軍生存者を救助後に基地(ニュージョージア島北東部)へ帰投中日本兵が反乱。反乱を起こそうとした日本兵を射殺している。その他「夕雲」機関長以下25名は、やはり海戦で沈没した「シャヴァリア」のものと思しき無人の艦載艇を分捕った。やがてアメリカ軍魚雷艇が出現して乗り移るよう指示されたものの猛烈な拒否行動を示した。アメリカ軍の魚雷艇は降伏を拒否されたのち「夕雲」の生存者分の食糧と飲料水を魚雷艇からボートへ分け与えると、反転し去っていった
ともあれ、日本軍は降伏や交渉をすることなく、戦争継続の道を選んだ。最大の課題は航空戦力の不足と、輸送艦の護衛だった
日本は戦争継続のための資源は国内になく、南方に頼っていた。
生産能力を維持するためには結局南方を守らないといけない。
そして南方を守るためには航空戦力がいる。
さらに南方で資源を確保できてもそれを国内まで輸送できなければ意味がない。
その全てに課題があった。
株には「信用全力二階建て」という言葉がある。
耐えきれないレバレッジを掛けすぎて、ちょっとしたリスクで吹き飛んでしまう脆い状況を指す言葉だ。
上で書いた通り、この時の日本はそういうレベルではない「5階建て」くらいの状況だった
そしてそうやって無理やり立てた五階建てのビルが、土台(輸送船の保護)から揺らいでいる状態だった。
そして、なんとかしようとしてさらにレバレッジを掛けることになった。
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すべてがギリギリの日本に対し、一方でアメリカは「毎週のように空母を作る」くらいに生産能力を増強していった。さらにヨーロッパの戦力も太平洋側に回され始めた
10月にはウェーク諸島を制圧し、はやくも絶対国防圏内に入ってきた。
日本国内でわちゃわちゃやっている間もアメリカのカットホイール作戦は進行し、下方面のニューギニア部隊はアメリカに蹂躙されていった
山本五十六が「い号作戦」によって兵士を送り込んだ「ラエ」や「サラモア」はあっという間に陥落した。
このあとも2年にわたってひたすら追い立てられ続け、最終的には9割の日本軍兵士が死亡する。
しかも大半は戦死することも出来ずに「消滅」していくことになる・・・酷すぎる。