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Channel: 頭の上にミカンをのせる
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トランプが守りたかったのは「製造業」とはあくまでも「国防力」だったと考えるべきではないかという話。 (特に造船業)

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トランプさんがいきなり関税を日和ったので、あっという間に話の前提が狂いました。


その結果、3月24日から沈黙していた「つみたてワニーサ」も再び出てくることに。




トランプの「MAGA文脈はただの方便」でありそんなものを真に受けるだけ損であることはわかりきっていましたが、今回でかなりそれが露見したのではないかと思います。

結局、トランプ政権のブレーンが最も危機感を持っているのは製造業が弱いと中国との戦時で困るという一点なんですよね。

しかし資本主義社会の米国でそれを言っても誰も聞かないから、
トランプというMAGAのカリスマを使ってMAGAナラティブに言い直しているだけで
最初からMAGAは工場で働くつもりなんてない(本当に工場に行きたくて仕方がない人が多いなら今の待遇になっていない)し、
トランプが米国で作れと言っている製品もかなり偏っている。
なので全製品のサプライチェーンを米国に移したいみたいな解釈をするのは的外れだ

一番アホらしいのは関係ないのにMAGAナラティブに騙される外野。


やっぱりGDPがあれだけ低いロシアに、
あれだけ支援したのにウクライナ戦争で全然勝てなかったのが衝撃だったんだろうな。
なんでもかんでも中国に作ってもらってるアメリカが中国と戦争になって勝てるはずないって危機感がクレイジーな政策を生んだんだろう。

きっかけは多分何段階かあって

①まずパンデミックで海運が止まった時に何も作れないと気付き、
②ウクライナ戦争で西側に砲弾供給能力がないのに気付き、
③更に船の建造能力もないのに気付き、みたいな

戦時下の継戦能力は第三次産業抜きGDPに比例する。

「弱者◯◯に救済を」なんてことをいう政治家は全員その裏を考えるべきですね。



実際に、米国と中国では経済力やミサイルなどの総合的な軍事力はともかくとして、「造船能力」「輸送能力」においては差が大きすぎて太平洋を守る力がない。割と「米国の覇権」は脆い

経済力でこそ圧倒的につよいアメリカだが、実は「核」を無視した継戦能力には結構な課題がある

www.cbo.gov
https://media.defense.gov/2024/Dec/18/2003615520/-1/-1/0/MILITARY-AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES-REPUBLIC-OF-CHINA-2024.PDF

「中国人民解放軍海軍の総合戦闘力は2025年までに395隻、2030年までに435隻に増加する」と予測されている。それに対して、アメリカは2030年までに300隻に満たない。

現時点では中国大陸が台湾を武力統一しようとした時に、アメリカは中国に勝てないということを意味する。
だからアメリカは台湾の防衛予算を10%に引き上げろとか、日本の防衛予算を3%に引き上げろとか要求してくる。

これを受けて、「トランプが米国で作れと言っている製品」はなにかというと・・・

1:鉄鋼・アルミニウム:
トランプ政権時代、安全保障上の理由を掲げてこれらの輸入品に追加関税を課しました。これは、米国の基幹産業であり、軍事にも不可欠な素材であるという認識に基づいています。また、ペンシルベニア州など、いわゆる「ラストベルト」と呼ばれる伝統的な工業地帯の労働者層(MAGA支持層の中核)へのアピールという側面も強いです。


2:自動車:
これもラストベルトの主要産業であり、雇用への影響が大きい分野です。トランプ氏は、メキシコやカナダ、あるいは日本や欧州からの輸入車に対しても関税を示唆したり、米国内での生産を強く要求したりしてきました。特に、工場閉鎖や生産拠点の海外移転には強い不満を示しています。
一方で近年の電気自動車(EV)シフトに関しては、バイデン政権ほど積極的ではなく、むしろガソリン車を擁護する発言も見られます。この点も「偏り」の一因と見なされる可能性があります。


3:防衛装備品:
これは安全保障に直結するため、国内生産の重要性はトランプ氏に限らず広く認識されていますが、彼は特に「アメリカ・ファースト」の観点から、同盟国への負担要求と合わせて、米国の軍事産業の強化を主張する傾向があります。


4:医薬品・医療機器:
新型コロナウイルスのパンデミックを経て、医薬品や医療機器のサプライチェーンが中国などに大きく依存していることへの危機感が高まりました。これも国家安全保障(国民の健康と安全)の観点から、国内生産回帰が主張される分野です。



5:国防力の要としての造船

www.nikkei.com
www.nikkei.com

アメリカ造船業が衰退した最大の原因は、レーガン政権が1980年代に【造船業への政府補助金制度を撤廃した】ことが最大の原因だ。アメリカ自身が「造船業への政府補助金制度を自ら撤廃した」のである


news.yahoo.co.jp

「中国の造船業はなぜ成長したのか」に関してはカギは「造船業と鉄鋼業の戦略的連携」だ。
中国は船舶業を「産業振興」から始まって、「構造調整、智能化、クリーンエネルギー化」へと発展させている。

トランプが施政方針演説で「造船局」を創設すると表明したことを書いた。この考え方は非常に素晴らしく、そうしなければ造船業は発展しない。しかし、一方では、本稿PartⅡで考察したように、鉄鋼業が輸入に頼っているようでは、造船業は成長しないのである。


www.chosunonline.com

米海軍艦艇の建造を韓国を含む同盟国に委託可能にする「海軍準備態勢保障法」など二つの法案が今月5日に米議会上院に提出された。

米国は1920年の商船法(ジョーンズ法)で、米国内の港間の輸送を認める船舶を「国内造船所で建造され、米国人船員が乗り組むもの」に限定している。また65年と68年の2回にわたり、米軍艦艇を自国の造船所で建造するよう定めた法律(Burns-Tollefson Amendment)で自国の造船業を保護してきた。ところが最近は自国の造船業が弱体化し、海軍艦艇の数で中国に抜かれるなど海洋覇権への危機感が高まってきた。そのためまず軍艦の建造を同盟国に委託できるよう規制の緩和に乗り出した。

米中新産業WAR

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トランプ政権の推奨する製造業の偏りについて

①安全保障・伝統的産業への偏重: 上記のように、安全保障に直結する分野や、MAGA支持層が多い伝統的な重厚長大産業に重点が置かれがちです。一方で、先端技術分野(半導体も重要視はしていますが、その戦略や重点はバイデン政権と異なる可能性)や、環境関連技術、あるいは消費者向けの多様な製品群への目配りが相対的に弱いと見なされているのかもしれません。
②経済合理性との乖離の可能性: グローバルなサプライチェーンの中で、必ずしも米国で生産するのが経済的に合理的でない製品まで「米国で作れ」と主張している場合、経済原則から見て「偏っている」と評価される可能性があります。
③政治的動機: MAGA支持層へのアピールという政治的な動機が優先され、産業政策としてのバランスを欠いている、という見方もあり得ます。





おまけ:第三次産業抜きGDPの比較(アメリカ、中国、ロシア)比較

この指標で見ると、中国がアメリカを大きく上回っていることがわかる。




アメリカはGDP全体では世界最大ですが、第三次産業(サービス業)の比率が非常に高いため(約81%)、第一次・第二次産業の合計額では中国の半分しか無く、ロシアと合わせると全く勝負できない状況にある。


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