普段は全く気にしなくていい債券市場における「ベーシス取引」(アーブ取引=裁定取引の一種)の話です。
額が巨大なのですが、巨大すぎる故に普段は認識すらできない資金の動きです。
トラスさんやトランプなど、市場の流動性を過信しすぎた政治家が無茶苦茶なことをやると、ここが崩壊して一気に金融市場の流動性が枯渇するんですね。
※トラスさんの時はどちらかというとレポ取引によるレバレッジがデカすぎたこととデュレーション調整の失敗のほうが問題になりましたが、この際も「ベーシス」は崩壊していたと思われます。
市場の極端な混乱と流動性の枯渇は、現物市場とデリバティブ市場(先物やスワップ市場)の関係性を歪めます。
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202306/202306k.pdf
通常であれば裁定取引によって一定の範囲内に収まるはずのベーシス(現物とデリバティブの価格差)が異常な水準に拡大したり、不安定になったりした可能性があります。
この異常なベーシスの動きによって予期せぬ損失を被ったり、ポジションの解消が困難になったりした可能性も考えられます。
市場全体の流動性が低下する中で、ベーシス取引の前提となる裁定メカニズムが機能しにくくなったとも言えます。
まじで金融の話を説明する時、ちょっとでも間違ってるとめっちゃ怒られるからどこまで書けばいいのかがわからなくてしんどい・・・。
本当は私のような素人じゃなくて、ちゃんと専門家が丁寧に説明してくれているサイトのURLを一つぽんと貼りたいだけなのに・・・。
米債急落の裏にマージンコールによる精算売り、との指摘は多いものの、先物ショート現物ロングのベーシス取引は依然健在。米10-30年入札も好調につき、「米債=安全資産」のロジックは崩壊とまではいかず。ただ足下のカオス具合は「コロナ禍のレバ解消を彷彿とさせる」との声も。債券市場に再び脚光。 pic.twitter.com/7MShoZLaIk
— Yuto Haga ⚽️ (@Yuto_Headline) 2025年4月12日
なお、今回は日本時間に一瞬だけクラッシュしたものの、裁定メカニズムは維持されているようです。
岡崎良介さんも、このベーシストレードの話は今回のショックの本質ではないと言っています。
アメリカで最も人気のある金融レターである「KobeissiLetter」による解説
アメリカ人はかなりの人がこのKobeissiLetterの情報を読んでると思ったほうが良いです。
The bond market just BROKE:
— The Kobeissi Letter (@KobeissiLetter) 2025年4月9日
In just 3 days, the 10Y Note Yield surged 60 basis points while the S&P 500 fell -8%.
This marks the LARGEST 3-day increase since 1982 and one of the largest divergences in history.
What happened? The basis trade broke.
(a thread) pic.twitter.com/GQt4xjAXze
債券市場が崩壊した。 わずか3日間で、10年債利回りは60ベーシスポイント急上昇し、S& P 500は8%下落しました。
これは 1982 年以来最大の 3 日間の増加であり、史上最大の乖離の 1 つとなります。
もっと具体的に言うと、昨夜何かが壊れたんです。
東部標準時午後7時から午前0時の間に、10年債利回りはさらに25ベーシスポイント急上昇した。 株式市場の先物が暴落したにもかかわらず、30年債利回りは5.00%を超えた。
何が起こった?
ベーシストレードの破綻
これは極めて異常な価格変動であり、何かが壊れたようです。
これにより、10年債利回りは、2024年9月に「FRBピボット」が始まったときの水準より60bps以上高くなった。
景気後退を織り込んでいる市場では、債券価格は上昇し、利回りは低下するはずです。
私たちは今、数十年で最も速い動きの一つとして、まったく逆の現象を目撃しています。
ここで何が起こっているのかに対する論理的な答えは 1 つあります。 「ベーシス取引」が解消されつつあります。
ベーシス取引とは
ベーシス取引は、現物国債と先物の価格差を「裁定取引」するためにヘッジファンドが使用する戦略です。
これには通常、最大 100 倍のレバレッジがかかります。
ベーシス取引は、以下の間のわずかな差(ベーシスと呼ばれる)を利用します。
1. 現金国債:スポット市場で購入された実際の米国国債
2. 国債先物:将来の日付で国債を売買する契約
先物と現金の価格差は頻繁に生じます。
これらの差異を活用できれば、「裁定取引」が可能になります。
米国債のベーシストレードは、2024年8月に解消された円キャリートレードと性質が似ています。
ボラティリティの急上昇により、ポジションの縮小が必須となる
しかし、今改めて認識しているように、これはリスクのない戦略ではありません。
ボラティリティが低いときは素晴らしいですが、ボラティリティが急上昇すると、取引に悪影響を及ぼします。
現在の推定によれば、ベーシス取引は莫大で、およそ 8,000 億ドルに達します。
ここで重要な点は、これらのポジションはレバレッジの高いロングポジションであるということです。
それらのレバレッジポジションが解消されると、誰かがショックの影響を吸収しなければなりません。
短期的には、これらのポジションはブローカー・ディーラーによって吸収されます。
8,000億ドルのベーシス取引は、プライムブローカーの未決済残高2兆ドルの約40%を反映しています。
問題は、ブローカー・ディーラー自体が資本に制約があり、そのような急速な動きをする余裕がないことです。
この状況になると米国債の増発はストップしなければいけなくなる
同時に、米国は財政赤字を補うために記録的な量の国債を発行し続けています。
米国債の供給が増加するにつれて、債券価格はさらに下落しています。
ディーラーのバランスシートは限られているため、
これにより、取引の長期レッグとレポ資金調達にさらなる負担がかかります。
米国債のベーシストレードは、2024年8月に解消された円キャリートレードと性質が似ています。
2020年3月にもボラティリティが急上昇したため、ベーシス取引は崩壊しました。
2020年の時はFRBは崩壊を抑制するために1日あたり1000億ドルの国債を購入することで流動性を供給しました。
まとめ
国債利回りの急上昇は、俯瞰的に見ると「リスクオン」感情の復活のように見えます。
しかし、それは全く逆であり、それが金価格が急騰している理由です。
ベーシストレードが解消されるにつれ、以下に示すように、金価格は債券$TLTを大幅にアウトパフォームしています。
異常な時代は市場の異常な変動につながり、不確実性は 2020 年 3 月の水準に達しています。
これについてはこの人の勝手な意見ではなくブルームバーグでも報道されていました。
対応すべき主なリスクは、ヘッジファンドが米国債と先物の間のわずかな価格差から利益を得ようとする「ベーシス取引」だ。
カシャップ氏は記者団に「かなり集中した取引」となっており、恐らく10社かもう少し少数のヘッジファンドが関与していると語った。
ヘッジファンドがポジションを素早く解消する必要がある場合
債券ディーラーが急激に膨れ上がる取引量を処理できなくなる恐れがある。FRBが2020年に介入を余儀なくされた際、ベーシス取引のポジション総額は5000億ドル前後だったが、現在はその倍になっている。
推定1兆ドル(約150兆円)に上るヘッジファンドの裁定取引、いわゆる「ベーシス取引」が急速に解消されると
米国債市場だけでなく他の市場にも悪影響が及び、金融安定を確保するためFRBの介入が必要になる。
当局は2020年3月、新型コロナウイルス流行の初期に、数週間にわたって約1兆6000億ドルの米国債を買い入れた。
んで、FRBのボストン連銀総裁であるコリンズさんが「対応する用意がある」という発言をしたので、一時的に落ち着いています
米連邦準備理事会(FRB)は「市場の機能や流動性に関する懸念が生じた場合に対処する手段を持っている。必要に応じて対処する用意はある」とした。