なんかまたとんでもないニュース出てきたな・・・
www.bloomberg.co.jp
これについて自分の考えを書いておきます。先に結論だけ。
1:私は1ヶ月くらい前から「マール・アラーゴ合意」の話を取り上げて、この織り込みが進むまで短期的にはドル安円高リスクが高いよというのはずっといってきたけれど、だからといってこれが実現する可能性は殆ど無いと思っている。
2:また、例え日米の間だけで強調してドル安円高誘導を行ったところで他がついてこなければ120円まで押し込むことは難しいと思う
3:ましてドル円は、関税に関するもろもろがすべて決着してしまった後はむしろ反動で強烈に円安方向にシフトすると思っている
4:今ドル円が非常に弱いのは◯◯◯だからで、これがひっくり返ったらむしろ円安になるし、私は日経平均は年末にかけてむしろ「非常に良くない形で」上がるんじゃないかとすら思っている
1と2についてはまずプラザ合意について当時の歴史的背景を理解する必要がある。
1985年のプラザ合意がなぜあれほど効いたかというとこの当時はアメリカの貿易赤字の対象国は日本と欧米諸国だったからだ。(日本+欧米諸国で過半数)
当時のアメリカの貿易赤字相手トップクラスだった日本だけでなく
ドイツ(西ドイツ)、イギリス、フランスといった主要国が「協調して」ドル高是正に動いたからこそアレほど急激にドル安にすることができた。
しかし、今現在はアメリカの貿易赤字はアジア諸国が過半数で、特に中国(及び中国の迂回輸出国)が圧倒的だ。
lanes.info
残り半分を見てもメキシコやカナダ(=USMCA)とEUが大きい。で、これに対してアメリカは被害者ヅラする資格はない。
自ら「自分たちで作るのを辞めて賃金が低い海外で安く大量に作らせることにした」帰結でしか無い。
で、トランプが喧嘩を売りまくった結果として第二のプラザ合意である「マール・アラーゴ合意」にたどり着くことはできるだろうか。
・まず最大の貿易赤字国である中国がアメリカとドル安人民元高で合意する可能性はゼロに近い。
・ユーロ圏もドイツなんかは通貨高を嫌がるだろう。
・カナダもカーニーはんがアメリカの態度にブチギレていて、対米強硬姿勢を示唆してる。
・ベトナムも最初こそアメリカにすり寄っていたが、中国は今アジア圏の国を必死に取り込みに行っている
(まぁ中国は中国で当然全く信用されておらず、ベトナムも韓国も今はアメリカ側の機嫌を取りに行っているが・・・)
news.yahoo.co.jp
www.nikkei.com
こんなバラバラな状況で、プラザ合意みたいな多国間協調なんて土台無理な話ではある。
3については、今まで散々言われてきた「日本の貿易赤字」「デジタル課税」などの問題がますます深刻化する状況で円高になることを期待するのは難しいため
日米だけでやったって、他の通貨がドルに対してそこまで上がらなければ、円だけが突出して120円まで買われるなんて考えにくい。
ましてドル円は、関税に関するもろもろがすべて決着してしまった後はむしろ反動で強烈に円安方向にシフトするだろう。
そもそも今の円安の背景には、不動の理由がある。
・日本の貿易赤字構造(今は原油価格が低いから助かっているが、再び上がれば貿易赤字は激増する)
・トランプ関税のせいで企業の海外直接投資はますます増えると考えられる
・新NISAでのオルカン購入みたいな対外投資の行動でも毎年お金が海外に流出
・デジタル課税で毎年8兆円の支払いがあり、今はギリギリインバウンドでの収益と相殺されてるが、円高が進むにつれインバウンドの収益は減る
・日米金利差もそうだが、そもそも実質金利がずっとマイナスの状況にある
・現時点ですでに円買いポジションは史上最大規模まで溜まっている
これらが解決しない限り、いくら政治的な合意で一時的に円高に振れたとしても、長続きするとは思えない。
むしろ、トランプの要求通りに対米黒字を減らしたり、アメリカでの生産を増やしたりしたらどうなるかというと日本の貿易赤字はさらに拡大して、もっと円安要因になる可能性が高い。