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400万部超えのメガヒット作である「デルトラ・クエスト」、それから「はれときどきぶた」など、児童書の出版社として有名な岩崎書店。実は「もしドラ」作者のハックルさんこと岩崎夏海さんが最近まで社長をされていました。
どうやらいろいろあって7月に退任されていたそうです。
岩崎さんは自らいくつかの絵本の編集などを自ら手がけられたり、作者や企業へのインタビューを行っており、それらははてなブログで公開されていたので目にしておりました。
そんなわけで、傍目で見ているだけでしたが「ハックルさん、ブロマガずっと続けながら社長としても頑張っているんだな」とひそかに応援していました。
本件について、確定情報ではありませんが、このようなツイートがありました。
このうちで一番興味深いのが岩崎書店。一昨年、岩崎書店は岩崎宏明が代表権のない会長として後見につき「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の著者で知られる岩崎夏海を社長に据えていたのが、6月の人事で岩崎夏海を解任し、岩崎宏明が代表復帰。
— ぬまきち@3日目東G23a (@obenkyounuma) 2018年8月4日
岩崎夏海は社長就任が2016年9月なので、わずか1年10ヶ月で更迭されたことになる。なお、岩崎夏海と同時に夏海の実弟岩崎潮生も役員に就任していたのに繰り上がりで社長にせずに会長が復帰というのは相当なお家騒動であったことが判る。復帰した岩崎宏明は78歳。改めて後継者探しとなる。
— ぬまきち@3日目東G23a (@obenkyounuma) 2018年8月4日
岩崎書店は、岩崎夏海社長になってから、
— ぬまきち@3日目東G23a (@obenkyounuma) 2018年8月4日
(1)出版点数を減らす
(2)タイムカード廃止
(3)コピー、プリントアウト禁止(ペーパーレス厳守)
(4)残業禁止
(5)社内読書会の開催
と、急激な社内改革を進めていたことから、それへの反発もあったのではないかと思われる。
本当かどうかはわかりません。ただ、いかにもハックルさんらしい話だなと思いました。
岩崎夏海さんについては知らないけれど、はてなにいた頃の「ハックルさん」の思い出についてならいろいろ語れることある人多いと思う
「はてなブログ」からはてなライフをはじめられた人はご存じないかもしれませんが、「ハックル」さんははてなダイアリー時代最も人気のある「はてなアイドル」の一人でした。良くも悪くも根はものすごく真っ直ぐな人で、それに反して非常にひねくれた文章を書く人でした。彼の文章を読んで「面白い」と思うような人たちが当時のはてな、であり、はてなを象徴する人物の一人でした。
社長になられた直後、彼はいかにも「ハックルさんらしい」めんどくさい文章を書かれています。
もちろん、ぼくは社長になどなりたくなかった。
(中略)
第三に、『マネジメント』についての本を書いた。そのぼくが、万が一にでも企業の経営に失敗したら、単にぼくの評価が下がるだけではなく、『もしドラ』を出版したダイヤモンド社さんやドラッカーさんの評判さえ落としかねない。これは、本当に多くの方々に迷惑をかけることになる。つまり、あまりにもリスクが大きい。
ところで、この頃のぼくには、一つの「仮説」があった。それは、「絵本業界は停滞している」というものだ。
(中略)
実は、そういう事例は、ドラッカーをはじめとする経営学の本にはいくらでも出てきた。なんの業界でもそうなのだが、長く続くとある種の慣習や常識のようなものができあがってしまい、それが足かせとなって経営の停滞を招く。ところが、そういうときにこそ業界の外側から門外漢がやってきて、状況を一変させてしまうことがよくあるというのだ。
んで、このあと唐突にスティーブ・ジョブズが登場する。
コレ読んだ時「うわーハックルさんの文章だわー、この人全然変わってないなー懐かしいわー」って思いました。 この人、中身はどうか知らないけど書く文章は本当に全く変わらんのだなぁと。
以前増田で「小説の読み方の教科書」や「エースの系譜」のレビューを書いた時にも指摘したけれど、この人、昔から本当に何について語らせても、何を書かせても理論展開が全く変わらない。
つまり、
1 なんか仮説を思いつく
2 それについてその仮説を補強するネタを長々と語る。
というか、ドラッカーやジョブズの話にむりやりこじつける
3 自説を補強する話を語っている間に、それが彼のなかで強固で確定した事実になってしまう
(小説の場合、ストーリーも「2」をそのまんまなぞるだけの展開が起きる)
という流れ。
本当に彼の文章はすべてこのパターンで出来ている。ブログだけならともかく、小説でもこうなるのがすごい。特に小説は彼の脳内世界だから、現実でも彼が2で語ったとおりになる。彼が思いついた野球戦術は、それこそ異世界チートの主人公の能力のように無双状態になってしまう。「チャボ」や「妹のジンテーゼ」もそうで、とにかく彼の小説は「彼の仮説」と「小説世界の中の現実」が不可分のものとして一致してしまっている。
それに同調できる人はすごく面白いと感じるだろうし、この理論そのものや、理論と現実にズレがないことに違和感を感じる人間からすると、気持ち悪く感じられる。このあたり、やねうらお先生とハックルさんのやりとりは思い出深い。
それでも、今の白ハゲマンガや嘘松と比べたら全然マシなんだけどね。白ハゲマンガや嘘松というのは上記の1~3のうち、3がさらに嘘くさくなっている話です。むしろ岩崎さんの思考は今のネットの白ハゲマンガなどを先取りしたものだったのかもしれません。
そういえば、hagexさん事件のときに久々にはてなでも話題になってましたが、やっぱり同じパターンの文章でした。多分もう、こういうふうに文章を書くというのが魂レベルで固まっているのでしょう。
良くいえば芯の部分がしっかりしていてブレない強さがあるということであり、悪く言えば本当に融通が利かない人だというのがわかります。
そんな彼は、少なくともネットでは絶対に他者からの批判を受け入れないタイプの人間でもありました。 ブロマガのラジオで、子供時代から、親と意見が違ったらそれは親が間違っているのだ、と確信を持っていたことを語っていましたし、また、ブログでも自分は絶対に正しいことを書いていて、自分の文章を批判する人は、文章の読み方を知らないか低能である、という煽り返しを毎回やっていました。しかも、どうやらそれは全部本気だった。
そんな感じで、ほどほどに妥協や譲歩をしながら他人と意見をすり合わせていくというのが全く出来ず、秋元康さん相手でも絶対に自分の意見を譲らないでガンガン主張していく。一方、それで折れないためにものすごく努力されていて、自分の正しさを証明するためめちゃくちゃ知識をかき集めまくっていることもよく伝わりました。
というわけで、私から見ても、ハックルさんは、彼自身が認めている通り、全く経営には向いてないタイプの人だと思ってました。
彼はイメージとしては、グレンラガンの「シモン」であり、目の前の壁や既存の常識に突撃してそれをドリルでぶち抜いていくようなやり方は向いているかもしれないけれど、今あるものを守り、発展させていくというのはとにかく向いてないじゃないかなあという印象が強かった。
全ては己の心が決めるのです。たとえ現実が理不尽であろうと、己の心がそれに屈しないかぎり人生には常に希望があるのです。退屈に思える日常でも本人がそれに意味を見出し楽しみ続ける限り人生は彩りに満ちているのです。
このポジティブという言葉では生ぬるい、過去も未来も現在も超越し塗り替える力、これこそがギガロマニアクs……じゃなくて、この小説に登場する「岩崎夏海」という人物の最強の武器なのです。
まぁそもそも、もしドラはドラッカーの本でもマネジメントの本でも経営の本でもなくて、ただのラノベだからね。経営に関しては完全に岩崎さんド素人であり、むしろ「ブロマガ運営」の経験のほうがもしドラよりはるかに価値があるくらいなので、なぜ社長に推薦したし、という話だと思います。
経営全く向いて無くてそのことを自覚している彼がそれでも経営に挑み続けた約2年間の戦いに敬意を表したいと思います
自分自身が経営者に全く向いていないことを自覚していたハックルさんが、1年10ヶ月もの間、50人以上の社員を背負って経営を頑張られるというのは非常に大変なことだったでしょう。私だったらもしそういう話を振られることがあったとしてもやる前から逃げ出していたと思います。
でもそこから逃げずに、自分なりの目標や仮説を立てて、取り組んでいったその勇気や行動力それ自体がすでにものすごく尊敬に値すると思ってます。本当にお疲れ様でした。
それはそれとしてフリーになられたのであれば「新作ラノベ」あくしろよ
http://info.nicovideo.jp/seiga/hucklenovel/
「ライトノベルの書き方」という記事を41回も連載して、ラノベの絵師さんのオーディションまでしたのにその後続報がまったくないんですが。わたしずっと待ってるんですけど。
いままでは社長業お忙しかったというのはわかりますので、是非今こそラノベの新作お願いします。