今回の記事は、見出しだけパパッと読んでくれればいいです。
- 日本や中国といった国が米国債を大量売却することは考えにくい。それをやると戦争になる
- しかし、トランプが大学への補助金止めたり免税ステータスを破棄したりした結果、大口のPEである米国の大学が、米国の資産を売却し初めている
- この問題を理解するための必要となる前提知識について
- 1. 米国大学基金(エンダウメント)規模 トップ10
- 米国の大学の資産はめちゃくちゃデカいが、米国債のマーケットはそれ以上に巨大である
日本や中国といった国が米国債を大量売却することは考えにくい。それをやると戦争になる
矢「アメリカという国の安全保障は単に軍事の問題じゃなくて、その経済の安全保障で医薬品とか、半導体とかも守ろうとしている」
岡「もう1個アメリカの経済の安全保障でアメリカの債券っていうのも入ってきませんか」
矢「そうです。だから、今回その国債を傷つけるようなことを多分中国がやったら、もう徹底的に戦うと思うんですよ。それを分かっているので、中国そこは絶対やらないし、過去1回事件が起きたのが橋本龍太郎さんの時ですね。」
岡「グローバルな最適化ではないんですね」
矢「全然。もう最適な行動だったらこんなことしないです。するわけないですからね」
岡「なるほど、最適化から遠い原理で動いていて、つまり普通の理論が対応できないから、結局トランプ理論になっていくわけですよね」
矢「そしてそのトランプ理論の支柱があのナバロであり、あのミランだから。そっちを理解しないといけないですけど・・・
そこを理解すりゃするほど日本からすると、もう理解したくもないような内容」
前の記事では
トランプはもはや世界秩序を守ろうとしていない一方で「アメリカの安全保障」についてはめちゃくちゃ敏感であり、
いくら中国といえども米国債を大量売却のようなことはしないという話をしました。
Oof. We just saw the largest foreign selling of US corporate bonds since the COVID crash. What are they seeing that they want to avoid? pic.twitter.com/TK73HzfR3w
— Markets & Mayhem (@Mayhem4Markets) 2025年4月20日
まぁ欧州を中心にしてPEやヘッジファンドは容赦なく米国債売ってますけどね。特に欧州のPEはマジでブチギレたみたいです。
しかし、トランプが大学への補助金止めたり免税ステータスを破棄したりした結果、大口のPEである米国の大学が、米国の資産を売却し初めている
BREAKING: Wall Street execs who follow the college endowment business say it's only a matter of time before @Harvard starts selling what's liquid in its portfolio ie stocks, maybe issue more debt, if its tax-exempt status remains revoked. There are UNCONFIRMED market reports that…
— Charles Gasparino (@CGasparino) 2025年4月19日
ハーバード大学の免税資格が剥奪されたままであれば、 ハーバード大学はポートフォリオ内の流動性のある資産、例えば株式の売却、あるいは債券発行の増加に踏み切るのは時間の問題だと述べている。
市場では未確認の情報として、売却が既に始まっているとの報道もある。
ハーバード大学にコメントを求めている。
報道によると、イェール大学は既に基金のプライベート・エクイティ・ポートフォリオを売却しているが、流動性の問題を考えると容易ではない。
ハーバード大学はPEへのレバレッジ比率が高く、基金の40%近くを占めている。
This excellent Barron’s 📊 shows how much governmental funding American elite universities are currently receiving. Needless to say - after reviewing these numbers, that the threat of cutting off funding could have a tremendous impact on these institutions. pic.twitter.com/aEQc8Slj83
— Yair Einhorn (@yaireinhorn) 2025年4月19日
バロンズ誌📊は、アメリカの一流大学が現在どれだけの政府資金を受け取っているかを示しています。
言うまでもなく、これらの数字を見れば、資金打ち切りの脅威がこれらの大学に甚大な影響を与える可能性があることは明らかです。
<図の見方:Endowmentは基金のこと>
大学名 (University Name):
意味: グラフにリストアップされている各大学の名前です。ハーバード、イェール、スタンフォード、MIT(マサチューセッツ工科大学)など、研究活動で知られるアメリカのトップレベルの大学が含まれていると考えられます。
見方: どの大学に関するデータなのかを確認します。
政府資金受給額 (Government Funding Received):
意味: 各大学が特定の期間(通常は会計年度、例えば2023年度など)に、連邦政府や州政府などの公的機関から受け取った資金の総額を示します。
主な内訳:
研究助成金: これが最も大きな部分を占めることが多いです。NIH(国立衛生研究所)、NSF(国立科学財団)、DoD(国防総省)、DoE(エネルギー省)などから、特定の研究プロジェクトに対して支給されます。特に理工系や医学系の研究が盛んな大学では巨額になります。
学生への財政支援: 連邦政府のペルグラント(低所得者向け給付型奨学金)や連邦ローンプログラムに関連する資金が含まれる場合があります。
その他: 特定の教育プログラムや公共サービスに対する補助金なども含まれる可能性があります。
(参考) 基金規模 (Endowment Size):
意味: 大学が寄付金などを元手に長期的に運用している資産の総額です。これは政府資金とは別の、大学の重要な財源です。(グラフに含まれていない可能性もあります)
(参考) 政府資金の割合 (% of Budget / % of Revenue):
意味: 大学の総収入または総予算のうち、政府資金が占める割合を示します。(グラフに含まれていない可能性もありますが、含まれていると非常に分かりやすい指標です)
この問題を理解するための必要となる前提知識について
1:米国の大学の免税資格 (Tax-Exempt Status):
米国の多くの私立大学は、非営利団体として連邦所得税や州・地方税(固定資産税など)が免除されています(内国歳入法典501(c)(3))。
寄付金も税控除の対象となるため、資金調達に有利です。
この資格が剥奪されると、大学は莫大な税負担を負うことになり、財政的に大きな打撃を受けます。寄付も集まりにくくなる可能性があります。
現在、一部の政治家が、大学の特定のポリシー(例:反ユダヤ主義への対応が不十分、DEI推進が行き過ぎている等)を理由に、この資格の剥奪を主張しています。
2:大学基金 (University Endowment)
大学が寄付金などを元手に長期的に運用している資産のことです。ハーバードやイェールは世界最大級の基金を持ちます。
運用収益は、奨学金、研究費、人件費、施設維持費など、大学運営の重要な財源となります。
基金は、株式、債券、不動産、プライベート・エクイティ(PE)、ヘッジファンドなど多様な資産(ポートフォリオ)に分散投資されています。
3:債券発行 (Bond Issuance):
大学が資金を調達するために、投資家に対して発行する借用証書のようなものです。大学は定期的に利息を支払い、満期に元本を返済します。
免税資格を持つ大学が発行する債券は税制優遇がある場合が多く、比較的低い金利で資金調達できます。免税資格がなくなると、このメリットが失われ、資金調達コストが上昇する可能性があります。
4:政府資金 (Government Funding):
大学が連邦政府や州政府から受け取る公的資金です。
主なものは、研究活動に対する助成金(研究大学にとって極めて重要)や、学生への財政支援(奨学金、ローンプログラムなど)です。
政府資金が削減・停止されると、大学の研究活動の縮小、学費の上昇、教育の質の低下などに繋がる可能性があります。
1. 米国大学基金(エンダウメント)規模 トップ10
大学基金の規模は、全米大学経営担当者協会(NACUBO)などが毎年調査・発表しています。以下は、2023年6月30日時点の市場価値に基づく上位10大学の基金規模です(出典:NACUBO-TIAA Study of Endowments FY2023)。金額は概算です。
ハーバード大学 (Harvard University): 約507億ドル
テキサス大学システム (University of Texas System): 約449億ドル ※単一大学ではなく大学システム全体の基金
イェール大学 (Yale University): 約407億ドル
スタンフォード大学 (Stanford University): 約365億ドル
プリンストン大学 (Princeton University): 約341億ドル
マサチューセッツ工科大学 (MIT): 約235億ドル
ペンシルベニア大学 (University of Pennsylvania): 約210億ドル
テキサスA&M大学システム (Texas A&M University System): 約182億ドル ※大学システム全体の基金
ノートルダム大学 (University of Notre Dame): 約179億ドル
ミシガン大学 (University of Michigan): 約179億ドル
米国の大学の資産はめちゃくちゃデカいが、米国債のマーケットはそれ以上に巨大である
全米大学基金の総額: NACUBOのFY2023調査対象(約688機関)の基金総額は約8,390億ドルでした。全米の大学基金総額はこれより若干多いと考えられますが、仮にこれを全体の規模感とします。
債券への配分比率: 同調査での平均的な債券(Fixed Income)への配分比率は約8.5%でした。つまり、8,390億ドル × 8.5% ≒ 約713億ドル が調査対象大学の債券保有総額の目安となります。
米国債の割合: この債券(約713億ドル)のうち、どの程度が米国債かは不明です。
安全性や流動性を重視する部分で保有されると考えられますが、仮に債券ポートフォリオの10%〜30%程度が米国債だと大胆に仮定すると、
約71億ドル〜214億ドル程度となります。これは非常に大雑把な推計であり、実際とは大きく異なる可能性があります。
米国債市場全体の規模との比較:
米国の発行済み国債残高(公衆保有分+政府内保有分)は、2024年時点で約34〜35兆ドルという巨大な規模です。公衆保有分だけでも約27〜28兆ドルに達します。
仮に、全米大学の米国債保有額が上記の推計範囲(数十億ドル〜数百億ドル前半)だとすると、**米国債市場全体から見れば、その割合はごく僅か(0.1%にも満たないレベル)**であると考えられます。